☆シオン様の立場と謎
……と、今までお話ししてきたクライン秘中の秘であるセイリオス殿下出生のことですが、なぜか、シオン様はご存じのようなのです〜。
いったい、どのようにして知ることができたのでしょうか。
不思議だとは思いませんか〜。
いろいろな憶測が成り立つと思います〜。
シオン様と殿下は、無二の親友であり、学生時代をともにした幼なじみですから、もう義兄弟と呼んでも良いくらいの仲。殿下の口から己の出生にまつわることを告白されたというのはありそうですよね〜。
シオン様が、魔道的な手段をもって見抜いたと言うのはどうでしょう。
名うての女たらしを自称する御仁です。ナンパの成功を魔法のおかげと噂されたことは一度もありませんから、人の心を覗く魔法、人の心を支配する魔法はたとえ知っていたにせよ、行使することはない……んでしょうかね〜、あやしいですよね〜。
ここで! シオン様のご実家である、ローゼンベルク家と対をなしてクラインを支える大貴族、カイナス家の存在に注目してみましょうか〜。
今はそうでもないのですが、マリーレイン様が正妃になることで、宮中はローゼンベルク派が主流となりました。
ミリエール嬢の父君であったエスタス=ローゼンベルクという方も、生前は軍を預かる重席に就いていました。外戚が幅を利かせる状態は、他の貴族たちにとって、おもしろくないわけです〜。
カイナス家が巻き返しを計ろうとする動きの一環として、シオン様の存在がここに浮かび上がるのです〜。
どこからが企みの始まりなのかは、もう、こうなってくると定かではありません。
シオン様が次期国王となるセイリオス殿下と懇意となったことを利用することを考えたとしたら、シオン様の失敗でわき起こってきたローゼンベルク家との摩擦を避けたと言われている、あの、シオン様勘当の措置が、カイナス家の立場を守りつつ、しかも、シオン様が殿下の側近第一に落ち着いたことによる嫉視からの保護をなしたとも言えます〜。
これはもう、見事な政治的手腕としか言いようがありません〜。
ローゼンベルク家の将来は、殿下の代になるとあまり芳しいものではありません。
どちらの派でもない、クライン王家に新たな息吹を吹き込む、まったく血の繋がりのない新王と、それを支える筆頭宮廷魔術師という右腕の職をカイナス家の者が拝命しているのですから〜。
ご自分の血に関して、家の誇りだけで生き抜いてこられた方ではありませんから、セイリオス殿下が建前上の血縁のみで親ローゼンベルク派を貫くわけがないのです〜。