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「アンドレ居るか?!」
今日も聖地の正殿に筆頭首座で在らせられる光様の声が響き渡っております。
ドスの利いたアルトの声は、彼女がかなり苛立っていることを表していますね。
「怒鳴るなオスカル。こっちに用意してある」
応える声は低く柔らか。さすがは宇宙の癒し系と頷ける、闇様の宥める声であります。
「ああ…すまんな。これが必要だったんだ。いつも助かる」
光様も少し機嫌が直ったようで、書類を受け取って颯爽と部屋を出て行かれました。
某宇宙と違って、こちらの闇様は真っ暗闇の中でぐーたらと水晶玉を見ていたりはしていません。
むしろ寝ている姿を見た者の方が少ないくらいで。自分の仕事は勿論完璧にこなし、さらに日がな一日光様の世話を焼いておいでです。
しかも容姿は精悍ながらどこか甘さを残し、長身の多い守護聖の中でも最も高い背丈をきっちりとした服で包み、柔らかな物腰で大柄な威圧感は感じさせずに、いつも穏やかな微笑みを絶やさない。
じつに良くできたお方であります。
闇の守護聖らしく、髪も瞳も漆黒です。首座様に言わせれば、黒葡萄の髪に黒曜石の瞳らしいですが、そんな乙女チックな表現をするのは女王様や補佐官くらいですよね。
男性の守護聖はしませんから、黒目黒髪で終わりです。
闇様の対となられる首座の光様は、どうやら会議に行ってしまわれたらしいので、後回しにするとして。
お二人の執務室を見回してみましょう。
顔が映りそうなくらいに磨かれた白い大理石の柱に高い天井が支えられています。
白い雲で取り巻く天の園が描かれた天井の四隅を天使の象が飾り、眼下に広がる瀟洒な室内を見つめているという、雷の鳴る真夜中に見たら効果抜群な迫力があるんじゃないかと思える豪華さです。
天使が見守る歴代光の守護聖が執務を行ってきた室内は、品の良い調度品がさりげなく配置されており、両筆頭の大きな執務机がこれまた大きな窓を背にして、ほぼL字形に配置されています。
入り口から見て側面に当たる机には今、闇様が収まってお仕事をなさっておられますね。
真面目な横顔がきりりとしてとっても素敵。
この横顔を常に見られる光様が羨ましいですわ。
はい、こちらの筆頭守護聖様達は、仲良く一つの部屋でお仕事をされるのですよ。これはもう、お二方がほんのお子様の頃からの習慣です。
なにしろお二方は光様が七歳、闇様が八歳からご一緒に守護聖を勤めてこられたのだそうですよ。
就任時期や長さ加減でなら、某宇宙の先任筆頭守護聖方様とよく似ていらっしゃいますが、睦まじさはどこにも負けません。
光様は遅いですね。早くお二方が並ばれるお姿を拝見したいものですわ。
それはそれは誰しもが見惚れてしまう程に、完璧な光と闇。見事な一対なのです。
まあ、滅亡寸前の宇宙を守る為に、女王様はその命の全てをつぎ込んでおられる昨今。宇宙運営の実務を任された守護聖様方も毎日忙しいのですから、その筆頭首座である光様は、それこそ体がいくつあっても足りない忙しさです。
ゆっくり待つと致しましょう。
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