仲は良いんです
 さて。このお部屋には、色々な方々がお見えになるのです。
 ほら、今も。

「オスカル、この前の惑星の話だが」
 ノックや前置きも無く、ドアを開けるなり切り出してきたのは、淡い金髪にアイスブルーの瞳をもつ貴公子です。
「オスカルはコンシュリジェリー星系での河川氾濫被害対策会議に行ったよ。フェルゼン」
 書類に顔を突っ込んだままで話を続けようとしていた炎の守護聖は、はっと顔を上げて苦笑されました。
「すまんな。つい夢中になっていた。まあ、君がいて良かったよ。聞いてくれ」
「はい」
 お二方の宇宙運営に関する難しいお話は解りませんから、この際炎様を鑑賞しましょう。
 しっかりと鍛え上げられ引き締まった長身は、闇様よりほんの少し低めで(まあ、闇様がバカでかいとも言えますが)前述しましたように淡い金髪にアイスブルーの瞳の、甘いお顔立ちの貴公子です。
 爽やかな笑顔で視察先のマドモアゼルやマダム達を魅力しまくり、聖地で一・二の伊達男ともっぱらの評判です。
 しかし、華やかな容姿や社交的な性格とは裏腹に、身持ちが固い真面目なお方でもあるのです。
 どこかの炎様とはやはり違いますね。
 騎士道精神を貫き、女王陛下の剣として忠誠を捧げていらっしゃいます。夢様に言わせれば『融通の利かない猪男』だそうですが、 実は運命の人との出逢いを心密かに待っていらっしゃるロマンチストなのは、妖精だけが知っているトップシークレットだったりします。
 うふ♪
「よし。ではこの配分でサクリアを送ろう」
 どうやら、お話が終わったようですね。
「頼むよ」
 闇様と炎様。にっこりと微笑んで立ち上がられましたね。
 いつも丁寧な闇様は、来客を必ず扉までお送りになられるのです。
 ちゃんと扉を開けて差し上げて見送ります。
 こんなところも某宇宙の……以下略。
 闇様に見送られて、炎様が執務室を出られました。この際炎様に着いていきましょう。

「ジェローデル、丁度良かった」
 ぶっとい柱の続く回廊を、スタスタ歩いて行くアッシュ系ブラウンなワカメウェーブ。
 炎様がニコニコと近寄れば、くるりと振り向いて、穏やかな微笑みが迎えます。
「おや、フェルゼン。どうしました?」
「これから惑星ティモールへサクリアを送るんだが、配分を教えておこうと思ってな。暇なら一緒にどうだ?」
 炎様のお誘いに、水様はにっこりと榛色の瞳を微笑ませて頷かれました。
「丁度手が空いたところです。お付き合いしましょう」
 まあ、よっぽど忙しいか、光様絡みの用が無い限り、水様が断ることなんて無いんですけどね。
 水様は、そのお優しい性質と優雅で品の良い立ち居振る舞いに、これまた典雅な面差しをされておいでです。
 さらにはお髪の色や柔らかなウェーブのかかり具合、そして多少線が細いシルエットのおかげで、華奢でたおやかな印象を受けるのですが、どうしてどうして、実はかなり鍛え上げていらっしゃる武闘派なんですのよ。
なにしろ背丈は炎様と変わりませんし、たまに炎様や光様と剣の手合わせをなさっていらっしゃる程です。
加えて、ダンスや楽器にも長けていらしてねえ。
 時おり光様のバイオリンと水様のチェロで、女王様の御前で競演される時など、あんな風に抱かれたい。なんてうっとりする女官がたくさんいますわ。