時は流れるもの。
人の心の悲しみや、悔恨などには関係なく。
そのくせ、折り重なる波の中に、それら全てを飲み込んで。
ゆっくりと、しかし確実に、流れ、重なり、忘却の彼方へと連れ去っていく。
ワーランドと呼ばれる世界。
世界の名を冠した大陸から、広大な海洋に隔てられた絶海の孤島。
カダローラと呼び習わされる唯一の島国には、当時、数多くの小国が台頭していた。
後に、この島国こそが、世界を支える地となるのだが、この時代、細い糸のような交易が途切れがちに続けられているだけで、この魔法に支えられた場所は、大陸にとって幻と伝説に包まれた、御伽噺の産物でしかなかった。
当然、カダローラの人々にも、大陸こそが伝説の中にある広大な地であったのだが、どちらの世界も、その内面の対立に目を奪われており、互いに外の世界を見る余裕など無かった。
ひとつの世界にあった、二つの文明が、共に疎遠であったのは、後退した技術や、隔てられた距離だけでなく、そんな内部事情も要因の一つだったのだろう。
後に開かれたこの島で、子供達が教えられる歴史物語のひとつを、紐解いてみることにしよう。
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