どうにか無事に、繁華街でメイを捕まえたらしいシオン。
なんと彼は、なんにもしないで、ただ送っていっただけらしい。 |
マイルズ |
「信じられませんね……貴方が?まったく何もなし?三日男の勇名は、何処に落としてきたんですか?」 |
シオン |
「うるせぇ・・・」 |
マイルズ |
「その顔だと、さぞ殿下もお楽しみになられたようですね」 |
シオン |
「セイルの野郎……遠慮無しに笑いやがって……」 |
マイルズ |
「まあ、晩餐会で、うっとうしくむらがって来る貴婦人や令嬢達を捌くのに、お一人でさぞご苦労されたことでしょうから、お喜びもひとしおでしょう」 |
シオン |
「……嫌味に拍車かかってねぇか?」 |
マイルズ |
「私は、いつもと同じですよ」 |
シオン |
「お前さんこそ、レオニスGETしたのかよ?」 |
マイルズ |
「何の話です?私はイーリス共々、彼を慰め、なおかつ肴にさせてもらっただけですよ。ああ、美味しいお酒でした。ご馳走様」 |
シオン |
「お前さんも、良い古び具合の狐になりやがったな……」 |
マイルズ |
「ほう……そうきますか?」 |
シオン |
「違うのかい?」 |
似たような背丈の二人が、冷た〜〜い火花を散らしていると、のーてんきな声が飛んできた。 |
メイ |
「あっれ〜?シオンにマイルズ先生?ど〜したのぉ?」 |
シオン |
「よ、嬢ちゃん。元気そうじゃん」 |
メイ |
「あたしは何時でもげんきよぉ♪シオン、こないだはありがとね。やっぱあんたの極悪非道の通り名は強力だねぇ。チンピラがあっという間に逃げたもん」 |
シオン |
「なんだよそれ……(メイに手ぇ出す奴がただじゃすまねぇってのは、最近浸透させてっからな・・・)俺も傷つくぜ、んなこと言われると」 |
マイルズ |
「骨董品のナイロンザイルより丈夫な神経をしておいて、何を言っていることやら・・・」 |
シオン |
「おい……」 |
メイ |
「あはははは♪上手い♪そ〜だよね〜。マイルズ先生に一票♪」 |
シオン |
「嬢ちゃん……」 |
マイルズ |
「そうそう、丁度よかった。メイ、大晦日に宮廷で舞踏会が開かれるんですが、一緒に行きませんか?」 |
メイ |
「へ?」 |
シオン |
「!?」 |
マイルズ |
「父の関係筋から、私にまで招待状がきてしまいましてね。断るにも口実がない。かといって、ドレスを着てもエスコートしてくれる人も無し。メイが来てくれるなら、私がエスコートしますよ」 |
礼装を纏った、銀髪の美丈夫にエスコートされる、まるで宝塚のような倒錯的イメージにメイは即座に疼いた。 |
メイ |
「うんうんうんうん♪すってき〜♪いくいく」 |
シオン |
「嬢ちゃん!」 |
メイ |
「あ〜でも、あたしドレス持ってないや」 |
シオン |
「ドレスなら、俺が用意してやるから、俺といかね〜か?何も女二人で舞踏会もねぇだろうが」 |
メイ |
「ヤダ」 |
シオン |
「何でよ?」 |
メイ |
「シオンの用意するドレスなんて、絶対ヤラシイのに決まってるもん」 |
シオン |
「んなことね〜って(誰が他の野郎に、メイの色っぽい姿なんぞ見せるかよ)嬢ちゃんらしい、可愛いの用意するぜ」 |
メイ |
「また子供扱いして……それもヤ」 |
マイルズ |
「私の妹のものなら、きっとメイに似合うものがありますよ。姉妹は、こういう時に便利です」 |
メイ |
「うんうん。ありがと〜マイルズ先生♪」 |
シオン |
「お〜い……」 |
メイ |
「そうだ♪王宮の舞踏会なら、シルフィスも礼装で警備するよね、ディアーナをシルフィスがエスコートして、あたしがマイルズ先生となら、絶対素敵よ♪」 |
マイルズ |
「面白そうですね。なら、ドレスを選びがてら、私の実家で相談しましょう」 |
メイ |
「は〜いよろしくぅ♪んじゃね、シオン。バイバイ」 |
マイルズ |
「では、そういう事ですから、これで失礼しますよ、シオン」 |
シオン |
「……・・」 |
にやりと笑うマイルズに、シオンは自分が逆燐を掻き毟った報復を受けたのを確認した。
本気で怒らせたマイルズの怖さは、長年の付き合いで知っていた。
かくして、歯噛みをする筆頭魔導士という、実に珍しいものが見られた通行人達に、恐怖の輪が広がったのは言うまでもない。 |